医師の方の中には、初めは勤務医として働いていてもその後開業される方が大勢いらっしゃいます。しかし、開業することに不安を抱える方も多くいることでしょう。その原因は、メリットやデメリットが明確に見えていないことやリスクを抱えることが挙げられます。開業にはリスクもつきものですが、失敗する可能性を極力減らすこともできます。知識をつけて、失敗しない開業をしましょう。
勤務医と開業医の違いとして大きいのは年収の差です。
厚生労働省が2017年に発表した第21回医療経済実態調査では、勤務医の平均年収が1,488万603円に対して開業医の平均年収は2,748万9071円でした。開業することによって得られる収入は、勤務医と比較しても約2倍であるという数値が出ています。
勤務医の中でもなんとか出世して病院長になったとしても、平均年収は2,483万3,205円です。開業医の平均年収が勤務医の最高峰である病院長を抜き去ってしまうのです。
また、勤務医の中でもどこで働いているかによって差が生まれます。民間の医療法人であれば平均年収は1,452万1,856円ですが、国立大学法人などの病院は1,192万9,465円です。勤務している病院によっては、開業することで年収は平均して2倍以上になっていることがわかります。
勤務医の場合は契約によって最低限の年収は確保されていますが、開業医は来院がなければ収入が低くなるというデメリットもあります。逆に言えば勤務医は高収入といっても上限がありますが、開業医はそれがないということです。
医師のお金事情については、こちらのページで詳しく紹介しています。
医師・勤務医のお金事情|年収や資産形成が重要な理由
開業医の方が年収は高い傾向にありますが、開業医ならではの支出もあるので一概に年収を比較できない面もあります。
・開業のために借り入れた借金の返済
・病院が老朽化した際の建て替えや修繕の準備金
・病気や怪我により休業した際の所得保障のための費用
・老後のための積立費用
これらは勤務医であれば不要な支出なため、開業医は自身で積み立てていかなければなりません。
そのため、勤務医と開業医の収入に開きがあるからといって、単純に自由に使えるお金が多いとは言えません。
厚生労働省の統計の中で、医療施設の種別ごとの医師数の年次推移を見ると医師全体が増加していることがわかります。
勤務医の中でも、医育機関付属の病院は55,187人、その他病院には147,115人が勤務医として勤務しています。診療所には102,457人勤務しているため、開業医は全体の3割を超えています。
つまり、3人に1人の方が開業しているということが言えます。
さらに、勤続年数を見ると、30代、40代後半、50代は平成14年から比較すると勤続年数が減少していることが読み取れます。急性的な来院が多い病院から慢性的な治療を行う病院に転職するという方もいらっしゃいます。しかし、このタイミングで開業医に踏み出す方も増加しているということが言えます。
開業医と勤務医を比較した場合、互いにメリットとデメリットが存在します。
メリットを比較してどちらが魅力的であるかを判断できますし、デメリットを知ることで対策を講じることができます。
少しでも多くの情報を得て、判断するための材料を増やすことが大切です。
開業するにあたっては、以下のメリットがあります。
・収入が上がる
・勤務医ではできない、独自のスタイルで診療ができる
・自分の裁量で仕事ができる
・親が開業医の場合、跡を継げる
・自分の好きな場所で働ける(故郷やなじみ深い土地など)
収入は平均値で見ると2倍となりますが、それ以外にも上記のようなたくさんのメリットがあります。
勤務医の場合は病院全体の方針に従わなければなりませんが、開業すると自分がおこないたい医療を実現することも可能です。人間関係に苦労している方も、開業医になればその煩わしさから解放されるでしょう。また、開業すれば自分の好きな場所で仕事ができます。
勤務医は医療機関に就職するという形をとるので、自分が希望する条件と勤務地がマッチしない場合があります。しかし、開業することにより理想が現実となるのです。
開業した方の中には、親の跡を継ぐためという方もいらっしゃいます。親に対する恩返しという面でも、開業して親の近くで働くこともメリットの1つだと言えます。
開業にあたり、デメリットも存在します。多くは以下のデメリットです。
・責任が重くなる(代わりの医師がいない、休みがとりづらいなど)
・資金負担が発生する
・スタッフの労務管理をする必要がある
開業する場合、自分が体調不良等で働けない場合は休診にせざるを得なくなります。同様に、用事があって平日に休みたくても有給休暇のように休みを取ることは難しいです。また、病院を開業する資金や軌道に乗るまでの運転資金は自己負担となります。
他にも病院を1人では経営することができないため、スタッフを雇わなければなりません。そこで、求人や労務管理といった業務も増えてしまうのが開業した際に起こるデメリットと言えます。
医師の中には生涯勤務医として従事される方も多くいらっしゃいます。そこで、勤務医のメリットとデメリットを見てみましょう。
<メリット>
勤務医のメリットは、何と言っても安定です。
病気や怪我で働けなくなった場合は補償が受けられるので生活に困ることはありませんし、どんなに来院数が減っても最低限の給与は保障されています。また、経営や宣伝活動に関わることも少ないので医療行為にのみ従事できるというメリットもあります。
さらに、医局に所属することにより学会への出席や海外研修に出かけられたり、医学博士の学位や専門医の資格が取得できたりする可能性もあるのは魅力的です。
<デメリット>
収入面で見ると、やはり開業医に劣ってしまいます。
また、勤務医は異動がある可能性もあることがデメリットとして挙げられます。そのため勤務地に関しては不安定であると言えます。
開業するにあたり、科によって開業しやすい科と開業しにくい科があります。
そこでなぜ科によって開業しやすいのか、なぜ開業しにくいのかという理由をご紹介します。
理由を理解することにより、自分の専門的な科で失敗しない開業のポイントが見えてきます。
厚生労働省による平成28年の医師・歯科・薬剤師調査の概況を見ると、勤務医よりも開業医の割合が多い科は内科・眼科・耳鼻咽喉科・皮膚科・心療内科・婦人科です。
これらの科は、かかりつけの病院になることによって、定期的に来院者数を確保できるという利点があります。
また、内科以外の科は近年需要が高まっている科であることも特徴的です。
眼科は少子高齢化により、白内障などの日帰り手術の需要が高まっています。皮膚科は年齢層も広く、近年保険が適応できる美容関連の診療を行うことで集客を伸ばしている科も多くあります。心療内科は他の科と比較して最も開業資金がかからずに開業できる点と、近年需要が急速に伸びているという特徴もあります。
開業時の初期投資が低く始めやすい場合や、定期的な来院が必要な科は開業しやすい科と言えます。
最も開業が難しい科は外科です。手術が必要になることが多い外科は、開業するにあたり設備を整えるための資金が高額になります。
さらに、手術が終われば一定期間通院した後に再び来院することが見込めないことが多いです。そのため、安定した来院数が見込めないため運営が難しい科でもあります。
開業での失敗をしないためには、注意するポイントをしっかりと押さえて失敗する可能性を極力減らすことが重要です。失敗する場合はパターンが決まっており、これを回避することが開業成功への一歩と言えるでしょう。ここでは注意すべきポイントをご紹介していきます。
開業する際に最も必要なことは長い時間をかけてしっかりとした準備を行うという点です。
たとえば、病院を建設するための土地を探している際に、妥協してしまうと開業後の来院者数に関わります。
スタッフを探す際にも同様のことが言えますし、医療機器を高額で購入してしまい余計な出費をしてしまったというケースもあります。
病院を開業するということはビジネスのスタートです。ビジネスを成功させるために、スタート時の準備は妥協することなく行うことが最も重要です。
開業準備に必要となる情報は、こちらのページに紹介していますので参照してください。
医師が開業で失敗しないための事前準備|気になる年齢や資金の貯め方まで紹介
準備に時間をかけると言っても、日々の業務で開業準備になかなか着手できないことがほとんどです。
そんな時には、開業に関わる専門家のアドバイスを聞くことも方法の1つです。
専門家は様々な開業を見てきていますので、自分が行っている開業準備に不足している点があればアドバイスを受けることができます。
コンシェルジュは、いつでも医師が開業するための手助けをしてくれます。そのために必要な最新の情報を持っているので、一人で悩まずに相談してみてください。
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開業するということは1つのビジネスを始めるということです。リスクを抱えるという面では不安な気持ちも大きいかもしれませんが、リスクを最小限に減らすことはビジネス必勝法の大原則です。
また、ビジネスを成功させるためには資金が大きく関係してきます。そこで、資産運用セミナーへ出席して資産を増やすことも方法の1つでしょう。
資産があれば施設にかけられるお金も変わるため、来院数の増加につなげることもできます。余裕を持った開業のためにも、資産運用セミナーへの出席はおすすめです。