人生100年時代と言われる昨今、この時代を生き抜くために国としての知恵が求められていますね。
先日、首相官邸で開かれた「未来投資会議」にて、
長期就労を希望する人が『70歳』まで働くことができる機会を確保することを
企業の努力義務とする方針を示しました。
定年廃止や継続雇用制度の導入など7つの選択肢から、
企業内で労使が話し合って選べるようにするというものです。
実現をした場合は、企業側は制度づくりや従業員への支援などに、
努力義務として取り組まなければならなくなります。
※ちなみに現在は、定年延長や再雇用などで希望者全員を
『65歳』まで雇用するよう企業に義務付けられています。
さて、この企業内で労使が話し合って選べる7つの選択肢、
一体どのような選択肢があるのでしょうか。
(1)定年を延長
(2)定年を廃止
(3)契約社員などでの再雇用
(4)他企業への再就職の実現
(5)フリーランスで働くための資金提供
(6)起業支援
(7)NPO活動などへの資金提供
以上の7つの選択肢があげられました。
同じ企業内で雇用を継続する選択肢は(1)~(3)、
社外でも就労機会を得られるように支援する選択肢は(4)~(7)になっています。
このうち、どれを採用するかは、各企業の労使で話し合って決めることになります。
ちなみに、現在義務化されている、
『65歳』まで働きたい人のためへの制度はそのまま継続します。
つまり、『65歳』をすぎても働きたい人のためへの制度を整備することが企業に求められています。
この改正案(希望者が『70歳』まで働ける機会を確保することを企業の努力義務とする方針)は
2020年の通常国会に提出される予定とのことです。
おそらく一律に『70歳』までの雇用を企業が義務付けられてしまうと、
企業側に急な負担が増えてしまうため、
当面は「努力義務」となっているのではないでしょうか。
いまのところ企業側には「人件費の増大につながる」との懸念があるため、
企業が守らなくてもペナルティーはありませんが、
政府は企業の対応状況を見極めたうえで、将来的には企業に義務づけることを検討しているようです。
この雇用年齢の引き上げは、少子高齢化で労働者の確保が難しくなる中、
高齢者がより柔軟に働ける場を確保できるよう促す一方、
増え続ける社会保障費を抑制する狙いもあると言われています。
厚生労働省が2018年9月に発表した、
2017年度・医療機関に支払われた医療費の速報値「概算医療費」では、
前年度より9,500億円増え42兆2千億円と過去最高を記録しました。
この費用増加の主な要因としては「75歳以上」の後期高齢者の医療費が伸びたことと言われています。
75歳以上の1人当たりの医療費は年間94万2,000円で、
75歳未満の22万1,000円の4倍以上の額となっています。
あと2~3年後には、団塊の世代が75歳以上に加わりはじめます。
そうすると、医療費の総額が増える一方で、
現役世代へのしわ寄せが一段と強まることになります。
寿命と健康寿命の差をできるだけ縮めるため、
定年を65歳から引き上げできるだけ健康で長生きしてもらえば、
その分、医療費の増加は抑えられる、という狙いもあるのではないでしょうか。
また、現段階では、
「公的年金の支給開始年齢は原則65歳から引き上げはしない」としていますが
定年年齢を引き上げれば年金保険料を支払う期間が長くなる一方で、
年金給付を受ける期間は短縮され、同時に対象となる高齢者人口も少なくなる構図になるでしょう。
さらにいうと、年金受給開始年齢を70歳以降でも可能にし、その分受給額を増やす仕組みを作り、
高齢者の就労を促す効果を考えているのかもしれません。
ただ、高齢者を雇用する企業からみれば、メリットとデメリットの両方が意識され
そう簡単に応じられない企業も多いかと予想されます。
また、現在勤務中の従業員に対してもフォローが必要となりそうですね。
逆に当事者としては、年金が減らされるかもしれない、
7つの選択肢がどこまで整備されるものなのか、不安を抱かれるかと思います。
日本は、世界に先駆け超高齢社会に突入するからこそ、
他国が真似したくなるようなシステムができるといいですね。