医師の方が開業を考えた際に、最も気になる部分は経営面です。開業して経営を安定させるには一体どうしたら良いのか悩んでいる方も大勢いらっしゃると思います。うまく経営するためには、様々な条件をクリアする必要があります。
そこで今回は、開業時や経営に関するよくある悩みの解決方法をご紹介します。
平成30年10月末の病院総数は179,142件で、そのうち診療所は102,163件あります。現在では医師が増えていますが、数としてはさほど増えていないのが現状です。
さらに、年間の新規開業数は5,000件弱という数字が報告されていますので、なんらかの原因で年間5%、つまり20件に1件は廃業しているという現状があります。また現在は30%以上の病院が赤字経営であるという報告もあり、深刻な問題です。
医学部増設のために医師が増加していますが、少子高齢化により人口の減少が起こるとさらに経営は厳しくなることが予想できます。
開業医の平均年収は約2,500万円と言われています。
しかし、これは平均値なので1億円稼ぐ医師の方もいれば、赤字経営に苦しむ方もいらっしゃるということです。
患者数が1日5人増えると、年収700万円以上増えるという試算があります。
このように、少しの差が明暗を分けるのです。クリニックを経営するにあたり必要な費用としては、施設にかかる光熱費や設備充実費、人件費など多岐に亘ります。ある程度の患者数が見込めなければ、経営は苦しくなってしまうのです。
そのため、赤字経営になってしまうケースと、年収1億円を超える方では一体どこに違いがあるのかを知っておくことは重要です。
医師の年収についての詳細はこちらのページで紹介しています。
医師・勤務医のお金事情|年収や資産形成が重要な理由
医院経営がうまくいかない場合、以下の6つに該当するケースが多く見られます。
<医院経営の問題>
・患者数が少ない
・口コミ数が増えない
・患者の満足度が低い
・スタッフの定着率が低い
・スタッフの教育ができない
・経営状況が把握できない
これらの問題点と解決策を説明していきますので、該当する点があればそれを改善することにより経営が上向きになる可能性が高いです。
患者数が少なければ収入も減ってしまうので、赤字経営の主な原因となることが多いです。
普通の商店とは違い、病院は一人の患者にかかる原価が低いため患者が支払った金額がそのまま収益になるケースが多くあります。
そのため、患者数が経営に直結します。そこで大切になるのは広報活動です。
今はホームページが必須の時代です。コンテンツを充実させて、見やすいページにするなどの工夫が必要になります。「具合が悪く、行ってみたら休診だった」という理由で他のクリニックに行ってしまうケースも考えられます。
ホームページにて休診の連絡ができるように工夫していれば、このような事態を避けられます。また、どのような雰囲気のクリニックかも伝えることができるため、おすすめの方法です。
かかりつけのクリニックがない場合には、口コミから選ぶケースがあります。
インターネット上にも口コミは広がっていますし、知り合いからの口コミで選ぶケースもあります。しかし、悪い口コミは簡単に広がりますが良い口コミはなかなか広がるものではありません。
実はこれは自然な流れで、悪い口コミはネタがすぐに思い浮かびますが良い口コミは投稿するネタがないのです。
そこで、自己開示を行うと口コミが広がるきっかけになります。
院長のプロフィールや医院が目指す医療、家庭でのケアの情報を開示することで、口コミが広がるきっかけになります。ホームページを利用する方法もありますが、患者が来院した際に掲示板で情報を発信することもできます。
患者の満足度が低い場合、かかりつけと認定してもらえず患者数にも関わってきます。
満足度を向上するためには様々な要素がありますが、近年注目されているのがインフォームドコンセントです。これは患者に治療内容を理解してもらい、納得したうえで治療方法を選択してもらい治療を行うことです。
一般の方であれば、医療に関して全く知らない方も多いのでわかりやすく伝えることが重要です。さらに、近年ホームページ上で情報がたくさん出ていますので、治療法について納得してもらう必要があります。
間違った知識から「あそこの病院の治療方法は間違っている」という方もいるので、納得させることが必要です。また、自動受付や支払機を使用して待ち時間を減少させたり、清潔感を保ったりするのも効果的です。
患者アンケートを導入することにより問題点を探ることができますので、投書箱を設置してみるのも良いでしょう。
「人は石垣、人は城」という武田信玄の言葉がありますが、経営を向上させるためにはスタッフが重要になります。
たとえばスタッフが入って1ヶ月で辞めてしまうと、仕事の効率がいつまでも悪いままの状況となります。原因としては求人の内容と実際の内容が違っていたり、先輩スタッフの対応が悪かったりする場合や、医師とスタッフとのコミュニケーション不足が挙げられます。
求人内容の確認はもちろんですが、スタッフを認めて職場環境をよくする心がけが必要です。
医療従事者からよくでてくるのが、「医師は私たちを見下している」という言葉です。これが上下関係を生み、先輩スタッフも新人を下に見ることによってすぐに辞めてしまうのです。
辞めるサインを見逃さず、人材育成に力を入れることが課題解決には重要です。
いくら医師が患者を大切にしたとしても、スタッフの仕事が遅かったり対応が悪かったりすると二度と来院しなくなることも多く見られま。
患者が来院して接する時間は、医師よりも医師以外のスタッフの方が長いので、仕事を円滑にし、手厚い対応を行うためにも人材育成は必要です。
仕事を覚えてもらうためには積極的に仕事に取り組んでもらわなければならないため、モチベーションを上げることが大切です。
コミュニケーションをしっかり取り、モチベーションが下がったことを見逃さずにフォローすることが大切になります。不平・不満を言わなくなったからと言っても、スタッフは抱えて他で吐き出しているケースが多いです。
これらは患者と接する際にも出てしまうので、教育しながら気持ちよく働ける環境整備が大切です。
税理士の方から毎月試算表をもらっても、見方がわからずに放置してしまっている方もいらっしゃいます。
しかし、医院の経営状況が記載されている資料ですので、見方がわからないのでは経営状況を把握できていないということになります。
こうなると全てがどんぶり勘定になってしまい、かけられる以上のお金をかけてしまい経営状況がどんどん悪くなるケースが多いです。中小企業の社長であっても、税理士からもらう資料を読める程度の経済知識を身につけていることが多いです。
深い部分まで知る必要はありませんが、お金に関わる報告書などをストレスなく読める程度の知識は必要になります。
経済状況を把握し、無駄をなくすことができれば経営にプラスに働くでしょう。
開業するということは事業を始めるということです。そして、経営がうまくいかないということは、何かしらの原因があるということです。経営がうまくいくためには、うまくいかない原因を把握して、改善することが重要になります。
今回紹介した内容を参考に、課題は何かを見つめ直し、改善することで経営は上向きに変わるでしょう。
開業や経営にまつわる悩みをコンシェルジュに相談したい場合は、少しでも早く専門家の意見を仰ぐようにしましょう。
プロの意見はとても参考になります。